恵比寿ふらふら



★★☆『球体写真二元論 細江英公の世界』〜1/28 東京都写真美術館(恵比寿)
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「肉体」「身体」から発しているものが沢山あふれていた。
作品のほとんどがモノクロで力強さを感じる。
世の中に出回っているやんわり白っぽい写真とは違って、ガツン!と何かが迫ってくる写真だ。


三島由紀夫さんに出会えるのは楽しみにしていたのだが、
舞踏家の土方巽さんや大野一雄さんの身体から発するものも 非常に面白かった。
私たち普通の人々でも何かを発しているんだから、
もっと意識したら、気の抜けたものではなくもっと違うものを
発せられるんじゃないかなっと思ってしまった。


各作品ごとにフロアは仕切られている。
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①デビュー作品の『おとこと女』(1961)
人の身体を強調していて、楽しみながら撮っているのかな?と
感じた。
お尻が横たわっているが、まるで一つの骨のよう。
(犬が歯磨きとか歯を鍛える用の骨の形をしたやつのよう)
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三島由紀夫を撮った『薔薇刑』(1963)
自分の容姿にコンプレックスを持っていた三島由紀夫
鍛えられた身体をしている。どういう気持ちでモデル役をやったのだろう?
基本はたぶんモデルも作家も楽しんでいるんだろうなっと感じる。
三島由紀夫はギロッとした眼力がある気がしたが、
薔薇を加えたアップの写真の瞳は、まっすぐだけどギロッとはしていない。
なんだか瞳をとおりこして深い奥底までのぞけてしまいそうな感じがした。
その写真を観ると三島由紀夫と目が合ってしまうのでつい引寄せられ目が離せなくなってしまう。
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土方巽と東北で撮った『鎌鼬』(1969)
東北の素朴なところに不思議な雰囲気をまとった土方巽
東北の人々がにこやかにしている中に土方巽だけが眉をひそめている写真とか、面白いなぁと思う。
ついつい細江さんが撮影している姿も浮かんでくる。
東北ののんびりとした日常に突然入ってきた異物。
土方巽がまとう雰囲気が面白い。
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④『抱擁』(1971)
どの部分なのか分からないくらい近寄った写真もある。
白い肌と黒い肌のコントラスト。
色だけのコントラストだけではなく、
白い柔らかな物体に、黒い血管の浮き出た黒い腕がまきついている写真もある。
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⑤写真絵本
■『たかちゃんとぼく』
犬とたかちゃんのお話。
挿絵と同じようにちゃんと話にあわせて犬とたかちゃんがポーズつけている。ほんとに話とぴったり合った雰囲気だ。
ハチ公の前でも写真撮っているし、この犬、モデル犬じゃないのにすごいなぁと思いつつ、写真だからイラストとはちょっとちがうリアルさもあり面白かった。


■『おかあさんのばか』
こちらは、ドキュメンタリー的。
少女が母が病気で亡くなった後の日々の気持ちを詩でつづり、
少女や家族の写真が載っている。
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⑥『ガウディの宇宙』(1984
これだけカラー。タイルのモザイクが撮影されている。
この写真は発しているものはとくに感じられなかったので
よく分からなかった。
私も、実際にスペインで生でガウディの世界を見たい。
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⑦『土方巽舞踏大鑑』(1989)
稽古をつけている土方巽のつま先まで集中している姿に
引寄せられる。すざましい集中力。
実際に舞台に立つ役者よりも発しているものの力が凄い。
土方巽の最後の姿はとても穏やかで美しい。
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⑧『胡蝶の夢 舞踏家・大野一雄』(2006)
わぁ〜また大野さんの写真に出会えると思っていなかったので嬉しくなる。
釧路湿原で舞う』の3枚は近景遠景どちらもあるんだが、
大野さんが湿原と一体になっている。
大自然が大野さんの身体を使って何かを訴えようとしているような感じがしてきた。


寝たきりになっている大野さんの上に曾孫が同じ姿勢で眠っている写真があった。
おなかポッコリのたくましい赤ちゃんはほんとに満面の笑みを浮かべている。
大野さんは意識の無いような無の表情を浮かべている。
死と生?でもちょっと死って感じとは違う感じがした。


以上